体内のコラーゲンは、線維芽細胞などの細胞によって合成されます。完成した線維が食べ物から直接運ばれるわけではなく、細胞の内側で鎖をつくり、修飾して外へ送り出す過程があります。ここでは、その流れと、たんぱく質の入れ替わり、食べたたんぱく質の消化を順に見ていきます。

細胞のなかで鎖をつくる3本がらせんになる細胞の外で線維になる
鎖が3本集まる構造と、細胞外での線維への組み立てを簡略化しています(コラーゲンの構造と生合成)(細胞外での組み立て)。

線維芽細胞が、細胞の外の材料をつくります

線維芽細胞は、結合組織に広く見られ、細胞外マトリックスやコラーゲンを合成する細胞です。細胞の外にある材料も、細胞の仕事によってつくられています。線維芽細胞は、コラーゲン線維だけでなく、基質の成分や弾性線維に関わる材料も生み出します。

線維芽細胞は、細胞外マトリックスの前駆体を継続的に分泌し、結合組織の構造を維持します。前駆体とは、完成した状態に至る前の物質です。細胞内での合成と、外へ出た後の組み立てがつながることで、細胞を取り囲む環境がつくられます。

2003年の総説は、コラーゲンの分布や働きとともに、線維性コラーゲンの生合成と、その後の組み立ての主要な段階を扱っています。コラーゲンの分子をつくることと、分子が集まった大きな構造をつくることは、観察する段階が違います。鎖、分子、線維を分けて追うと、そのつながりが分かります。

細胞のなかで、アミノ酸の鎖ができます

コラーゲンの鎖は、遺伝情報からつくられた伝令RNAをもとに、リボソームで合成が始まります。リボソームは、アミノ酸をつなぐ細胞内の仕組みです。つくられた鎖は、小胞体の内側へ取り込まれ、修飾を受けます。材料を並べる段階と、その後に形を整える段階があります。

プロリンやリジンは、まずアミノ酸残基として鎖に組み込まれ、合成後に水酸化酵素による修飾を受けます。水酸化は、分子に水酸基を導入する反応です。プロリンからヒドロキシプロリンへ、リジンからヒドロキシリジンへという変化は、鎖をつくった後に起こります。

ヒドロキシプロリンは、たんぱく質合成後の修飾によってできる、コラーゲンの主要な成分です。最初からヒドロキシプロリンを順番に並べるという説明とは異なります。すでにつながった鎖のなかの特定の部分に酵素が働きかけ、構造に必要な性質を与える過程です。

ビタミンCと水酸化の関係

プロリンを水酸化する酵素は、アスコルビン酸、鉄、α-ケトグルタル酸などを必要とします。アスコルビン酸は、ビタミンCの化学名です。この酵素反応では、鎖に含まれるプロリンに酸素が導入されます。ビタミンCという栄養素がコラーゲンの説明に登場するのは、このような反応に関係するためです。

アスコルビン酸は、酵素に結合した鉄を、反応に必要な状態へ戻す補因子として働きます。補因子とは、酵素の働きを助ける物質です。ビタミンC自体が長いコラーゲンの鎖になるのではなく、鎖を修飾する反応の条件に関わっています。

1991年の総説は、プロコラーゲン中のプロリンの水酸化にアスコルビン酸が必要であり、ヒドロキシプロリンが三重らせんの安定性に関わると説明しています。リジンの水酸化に関わる酵素にも、アスコルビン酸が必要です。鎖をつくる反応と、つくられた鎖を修飾する反応は区別して読むことができます。

健康長寿ネットは、ビタミンCを、骨や腱などの結合たんぱく質であるコラーゲンの生成に必要な化合物と説明しています。ビタミンCは水溶性のビタミンで、コラーゲンの合成に関与します。ここで扱うのは体内の反応であり、個人に向けた食べ方や量の説明ではありません。

鎖が巻き合い、細胞の外で線維になります

2009年の総説は、コラーゲンを、左巻きの鎖が3本集まって右巻きの束をつくる線維状の構造たんぱく質と説明しています。この巻き合った形が三重らせんです。分子の形が整うことと、分子同士が大きな線維になることは、続いて起こる別の段階です。

合成された鎖は小胞体やゴルジ体を経て修飾され、細胞の外へ分泌されます。細胞外マトリックスの説明では、コラーゲンはプロコラーゲンという前駆体として送り出され、酵素で切断された後、細胞外で組み立てられるとされています。分泌された時点の形と、組織内の線維の状態は同じではありません。

線維性コラーゲンの分子が、少しずつ位置をずらして集まると、原線維ができます。ヒドロキシリジンは分子間の架橋に関わり、細胞外マトリックスの安定性に関係します。架橋は、分子の間を結ぶつながりです。分子を並べることに加えて、その間の結びつきも組織の構造に関わります。

2011年の総説は、コラーゲンが組織の形や機械的な性質を支えるだけでなく、細胞との相互作用にも関わると説明しています。線維を単なる静止したひもとして見るだけでは、細胞外マトリックスのすべては説明できません。分子が存在する場所と、それに接する細胞の関係も研究の対象です。

壊血病から見える、合成過程の重要性

壊血病は、ビタミンCの欠乏によって起こる病気です。アスコルビン酸が不足すると、水酸化酵素の働きが損なわれ、コラーゲンの安定性に関わる修飾が十分に進まなくなります。体内の分子を組み立てる反応と、結合組織の状態との関係が現れます。

壊血病では、結合組織が正常につくられず、毛細血管がもろくなって出血などが起こります。長い航海で新鮮な果物や野菜を得にくかったことは、歴史的な流行の背景として説明されています。この歴史は、コラーゲンが食べ物の材料だけでなく、体内の構造を支える分子であることとも結びつきます。

1991年の総説は、ビタミンCが不足した動物での合成低下には、水酸化の変化だけでは説明できない面もあると論じています。1991年の同総説では、モルモットの体重減少や、アスコルビン酸を必要としないプロテオグリカン合成の低下も検討されています。酵素反応の仕組みだけで、欠乏状態の全体を説明しきるわけではないという研究上の論点です。

コラーゲンの入れ替わりは、組織によって違います

たんぱく質には、古いものが分解され、新しいものに置き換わるターンオーバーがあります。合成だけでなく、分解も含めて見る言葉です。たんぱく質の種類によって入れ替わる速さは異なり、すべてが同じ時間で置き換わるわけではありません。

2000年の研究は、軟骨と皮膚のコラーゲンを比べ、軟骨のコラーゲンのほうが組織内に長くとどまり、入れ替わりが遅いと報告しています。2000年の同研究は、たんぱく質の滞在時間の指標と、糖化によってできる物質の蓄積との関係を調べています。単に年齢と量を並べるのではなく、組織内にとどまる時間という要素を検討した研究です。

2000年の研究で比較されたのは、軟骨と皮膚に存在するコラーゲンの性質です。料理や食品を食べた後の試験ではありません。組織の入れ替わりに関する測定を、食べた材料がそのまま入れ替わるという説明へつなげることはできません。

食べたたんぱく質は、消化と吸収を経ます

消化は、食物に含まれる大きな分子を、吸収できる小さな分子へ分解する過程です。たんぱく質は、消化酵素によって小さなペプチドやアミノ酸へと分かれます。体内で細胞がコラーゲンの鎖を合成する過程と、消化管で食物が分解される過程は、向きも場所も異なります。

2004年の総説は、小腸の上皮細胞にあるPEPT1という輸送体が、ジペプチドやトリペプチドを取り込む仕組みを扱っています。輸送体は、膜を越えて物質を運ぶたんぱく質です。消化で生じた小さなペプチドの取り込みを説明するもので、体内のコラーゲン線維が完成する段階を示しているのではありません。

2014年の総説は、健康な成人の腸で、より大きなペプチドが分解されずに通過するという証拠を検討し、ジペプチドやトリペプチド以外には、明確な証拠が乏しいと結論づけています。分子の大きさや、細胞の中へ入る段階と血液へ移る段階を区別することが、この問いの中心です。

血液中で、どのペプチドが測られたか

2005年の研究は、ゼラチン加水分解物を食べた人の血液を調べ、ヒドロキシプロリンを含むペプチドを同定し、Pro-Hypを主な成分として報告しています。2005年の研究では、血液中のペプチド型ヒドロキシプロリンの増加と、その後の低下が測られています。測定の対象は、体内のコラーゲン線維の量ではありません。

2007年の研究は、魚のうろこ、魚の皮、豚の皮に由来するゼラチン加水分解物を比べ、血中で検出されるペプチドの量や構造が由来によって異なると報告しています。同じカテゴリーの材料でも、測定される分子の組み合わせまで同一とは限らないという観察です。

2010年の研究は、液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせた方法を用い、ヒドロキシプロリンを含むジペプチドやトリペプチドを血しょうで定量し、Pro-Hypを主成分として報告しています。同定が分子の種類を見分けることであるのに対し、定量はその量を測ることです。

2012年の研究は、コラーゲン加水分解物を食べた後の血しょうで、Pro-HypとHyp-Glyを測り、食品由来のHyp-Glyを定量したと報告しています。Proはプロリン、Hypはヒドロキシプロリン、Glyはグリシンを表します。並び方を含めて記した略号は、測定対象の分子を区別するために使われます。

2022年の研究は、ゼラチンと低分子のゼラチン加水分解物などを比べ、血中のヒドロキシプロリン、Pro-Hyp、Hyp-Glyの濃度を測り、ゼラチンを食べた後にもペプチドの濃度上昇があったと報告しています。ここで比較されたのは、決められた試験条件での血中濃度です。

血液にある分子が見つかることと、その分子によって体にどのような変化が起こるかは、研究の問いが違います。2005年にペプチドを同定した研究の測定から、組織のコラーゲンがどれだけつくられたかを直接読み取ることはできません。測定対象を離れた結論にしないことが、研究を読むうえでの区切りになります。

体内での居場所や分子の形はコラーゲンの基本、加工で変わる性質はゼラチンとのちがいで確認できます。鎖に関する言葉はペプチドの説明と用語集にまとめ、比較試験や総説の読み方は食べるコラーゲンの研究を読むためにで扱っています。

参考にした資料