食べる・つくる
コラーゲンを多く含む食材と料理

コラーゲンを含む食材を見分ける手掛かりは、動物の体の中での役割です。皮膚、腱、骨、軟骨などの結合組織は、体を支える構造に関わります。食材の皮やスジが煮込むとやわらかくなること、冷えた煮汁が固まることを、組織と調理の両方から見ていきます。
皮・腱・軟骨・骨が持つ構造
皮膚の中で、真皮は表皮と皮下組織の間にある線維性の結合組織です。コラーゲンを含む皮の部分は、筋肉の身とは異なる素材として料理に使われます。皮を外すか残すかは、食材の形だけでなく、煮汁に出てくる成分を考える際の違いにもなります。
腱は骨と筋肉をつなぎ、主に線維状のコラーゲンからなる組織です。食材としてのスジの強い弾力には、動物の体を支え動かすための構造が関わっています。肉の繊維とスジは、見た目が近い部分があっても同じものを指すわけではありません。
軟骨は軟骨細胞と、それを取り巻く基質からなる結合組織です。特に線維軟骨はコラーゲンを多く含みます。骨については、リン酸カルシウムなどの無機物と、コラーゲンを含む有機物からなる硬い組織として説明されています。骨を、ミネラルだけの塊と捉えると、だしやゼラチンの原料になる側面を見落とします。
食材として使われる軟骨にも、鶏の胸やひざ、豚の耳やあばらなどの部位があります。日本語版Wikipediaは、こうした食材の歯切れのある食感を挙げています。皮や腱と同じ結合組織の仲間でも、口に入れたときの感触を同一視できません。
体の中の配置はコラーゲンとはで扱っています。ここでは、部位が料理に移ったとき、どのような素材として使われるかに注目します。
スジ肉は、長く煮る料理へ
スジ肉は、食肉の腱の部分や、腱の付いた肉を指します。同じ名で扱われるものにも、腱そのもの、肉を切り分ける際に外したスジ、膜状の部分などがあり、すべてが同じ形や肉付きではありません。
日本語版Wikipediaの解説では、スジ肉は長時間煮込むとやわらかくなり、だしが出るため、おでんに使われてきたとしています。西日本では、こんにゃくとともに砂糖やしょうゆで煮る料理なども紹介されています。料理名だけでなく、どの部位を使うかによって、鍋に入る素材の姿も変わります。
スジ肉とその煮汁にはゼラチン質が多く含まれ、野菜などと一緒に冷やすとゼリー寄せや煮こごりになると説明されています。煮込んで身をやわらかくする工程と、煮汁を冷やして形を作る工程がつながる食材です。
豚足は皮・腱・軟骨が中心
豚足は趾骨の周囲の部位で、肉の部分が少なく、皮、腱、軟骨が大部分を占めます。コラーゲンを多く含み、加熱するとゼラチン質になります。一般の肉の切り身とは、食べる部分の構成が違います。
同じ解説には、沖縄ではてびちと呼ばれ、煮付け、おでん、沖縄そばの具として食べられることが記載されています。鹿児島県の奄美地方には、甘いしょうゆや黒糖で煮込む料理もあります。煮る方法は共通していても、味付けや食卓での位置づけには地域の違いがあります。
豚足には、下ゆでの後に塩焼きにするものや、塩ゆでで供するものもあります。食材の部位が同じでも、煮込みの味付けに限らず、下ゆでした後の仕上げを変えて使われています。
手羽先と手羽元は別の部位
鶏の手羽先は翼の先で、ゼラチン質と脂肪が多く、から揚げ、煮込み、だしなどに使われます。これに対し、手羽元には骨、肉、皮があり、煮ものにも向くとされています。似た呼び名を、同じ切り身の大きさ違いと考えないことが、レシピを読む手掛かりになります。
手羽中にも肉とともにゼラチン質の部分が多いとされています。料理で「手羽」とだけ書かれているときは、どの範囲を使うかで姿が変わります。手羽先の煮ものでは、皮と骨の付いた材料を使い、煮汁を冷やす段取りを示しています。
魚の皮と、ふかひれ
魚皮や魚のうろこも、ゼラチンを取り出す原料になります。家庭の煮魚では、魚の身や皮を煮汁ごと冷やし、自然にゼリー状に固まったものを切って供する料理があります。魚の煮汁が固まる現象は、粉ゼラチンを加えたときだけに起きるものではありません。
ふかひれは、主にサメの尾びれや背びれを乾燥させた食材です。下処理をしてから煮込み、ゼラチン質の食感を使う料理にします。ほぐしたものをスープや点心の具にするほか、ひれの形を残して煮る料理もあります。食材名は動物のどの部分かを表しています。
ふかひれの乾燥品は、生のひれを加熱し、表面をこすって鮫肌を除き、油脂分を落として天日干しすると説明されています。乾物を戻して調理する食材であり、魚の身を切り分けてそのまま煮る方法とは、鍋へ入れるまでの準備が異なります。
奈良県のエイの煮こごり
農林水産省「うちの郷土料理」は、奈良県の葛城地域などに伝わるエイの煮こごりを、赤エイを甘辛く煮付けた料理として紹介しています。煮るとゼラチン質が煮汁に出て、冷めると固まることが料理名につながっています。
同じ資料は、正月や結婚式など、ハレの日にも食べられてきたと説明しています。煮こごりは、鍋に残った煮汁の状態を指すだけでなく、ひとつの料理として食文化の中に置かれています。皮と骨を使う調理の手順は、魚のあらでつくる煮こごりで扱います。
アスピックとテリーヌ
アスピックは、肉のだしなどを固めた塩味のゼリーで、肉、魚介、野菜、卵などを包む料理です。甘い菓子のゼリーとは味付けが違いますが、だしを固めて具を支える料理として、日本の煮こごりと並べて考えられます。
テリーヌは、本来はふた付きの器を指し、その器で作る料理も同じ名で呼びます。挽き肉、魚のすり身、野菜などを詰めて焼いたり、湯せんで火を通したりする料理です。透明なゼリーの見た目だけで、すべてのテリーヌをひとくくりにすることはできません。
日本の煮こごりには、温かいご飯にのせたり、温かい食材の上で溶かしたりする食べ方もあります。切り分けた冷菜としての形だけでなく、溶けたときに煮汁の味をほかの料理へ合わせる使い方も、同じ材料の性質から生まれています。
冷えて固まっても、材料は同じとは限らない
コラーゲンを加熱して取り出したゼラチンは、冷やすと水を網目の中に保ってゲルになります。魚や肉の煮汁を冷やしてできる煮こごりにも、この材料の性質が関わります。
一方、ところてんは海藻を煮溶かして得た寒天質を固めた食品です。寒天の主成分は多糖類であり、動物由来のコラーゲンを使って固めるものではありません。似た形でも成り立ちが異なる例は、固める素材のちがいで比較しています。