透明、乳白色、琥珀色、淡い緑色のゼリーを入れた小鉢

透明でやわらかな料理でも、固めている成分は同じとは限りません。ゼラチンは動物のコラーゲンに由来するたんぱく質です。これに対し、寒天、ペクチン、カラギーナンは多糖類を主な成分とします。見た目の似たゼリーを、原料と分子の違いから見比べます。

原料と成分で見比べる

ゼラチンは温度で行き来する

ゼラチンは、アミノ酸の鎖が網目を作り、その中に水を保つことでゲルになります。液体を冷やして形ができても、温めると再び流れる状態になります。作り方の中心は、材料を溶かす工程と、温度を下げる工程です。

また、生のパイナップルやキウイフルーツに含まれるたんぱく質分解酵素は、ゼラチンを分解して凝固を妨げます。単に液体を冷やせば必ず固まるという材料ではありません。果物を組み合わせる手順はゼラチンで固める台所の基本に載せています。

寒天は海藻の多糖類を使う

寒天は、紅藻類から煮出した粘液質を固めたところてんを、凍結・乾燥させたものです。乾燥した素材をもう一度溶かして使うため、動物の皮や骨を出発点にするゼラチンとは成り立ちが違います。

日本語版Wikipediaは、寒天の液を38℃以下に冷ますと固まり、固まった寒天は85℃以上にならないと溶けないと説明しています。冷やしてできる形でも、溶け始める条件には差があります。寒天が口の中でゼラチンのようにとろけないのは、この性質によるものです。

寒天の凝固は多糖類によるため、パイナップルやキウイフルーツのプロテアーゼによって妨げられません。酵素の働きを比べると、原料の違いだけでなく、固めている物質がたんぱく質か多糖類かという違いが見えてきます。

寒天に含まれる成分のうち、固まる性質を担うのはアガロースです。英語版Wikipediaは、寒天をアガロースとアガロペクチンを含む材料として説明しています。原料の海藻名と、そこから取り出す多糖類の名前は、区別して読めます。

粉末寒天は溶けやすいものとして、角寒天は水漬けと裏ごしが必要なものとして説明されています。糸寒天も、角寒天に近い性質を持つ形状です。粉、角、糸という違いは完成する料理の名前ではなく、調理を始める前の材料の形を表しています。

寒天には、固まり始める温度と、融け始める温度が離れている性質があります。英語版Wikipediaは、この差をヒステリシスと呼んでいます。冷やす途中で固まった温度まで温め直せば、ただちに同じように溶けるという関係ではなく、加熱と冷却でたどる状態の違いがあるのです。

ペクチンは糖・酸・カルシウムとの組み合わせ

ペクチンは、植物の細胞壁などに含まれ、果実にも存在する多糖類です。食品用にはかんきつ類やりんごなどから取り出され、ジャムやゼリーのゲル化に使われています。果物が材料でも、ペクチンを使う料理とゼラチンを使う料理では、固まり方を支える条件が異なります。

英語版Wikipediaの解説では、メチル化の多いペクチンは糖と酸の条件で鎖同士が結び付き、メチル化が少なくなるほどカルシウムによるゲル化が起こりやすくなるとしています。同じペクチンという名前でも、種類を区別せずに同じ働きと扱うことはできません。

日本語版Wikipediaも、カルシウムと結び付く部分がゲル化に関わると説明しています。また、ペクチンを含む果物を牛乳へ直接混ぜても、それだけで凝固するわけではないとしています。果実中に成分があることと、調理に使える条件が整うことは別です。

ペクチンを作る原料には、かんきつ類の乾燥した皮や、果汁を搾った後のりんごの残りが使われます。果汁の生産で生じる部分を材料にできる点も、果実とペクチンの関係です。果汁そのものと、固めるために取り出したペクチンは、食品の中での役割が異なります。

果物の中にあるペクチンの量にも違いがあり、りんご、なし、すもも、かんきつ類などは多く、さくらんぼ、ぶどう、いちごなどは少ないと説明されています。果物という分類が同じでも、その組成まで同じではありません。果物から作るゼリーの説明で、原料名が意味を持つ理由でもあります。

加熱後の振る舞いにも種類の違いがあります。英語版Wikipediaは、アミド化という処理をしたペクチンのゲルは、加熱してから冷やすと再び固まる一方、従来型のペクチンのゲルは液体のままになるとしています。ペクチンなら何でも同じ温め直しができる、とは整理できません。

カラギーナンは種類で性質が変わる

カラギーナンは、紅藻類から取り出す、硫酸を含む多糖類です。食品では、固めるだけでなく、とろみを付けたり、分離を抑えて状態を保ったりする材料としても使われています。ゼリーという完成形だけを見るより、食品の中でどんな役割を担うかに注目すると用途がわかります。

英語版Wikipediaでは、カッパ型はカリウムのある条件で硬いゲルを、イオタ型はカルシウムのある条件でやわらかいゲルを作り、ラムダ型はゲルを作らず乳製品にとろみを付けると区別しています。カラギーナンの名前だけで硬さを決められない理由です。

カラギーナンは、熱湯にはどの型も溶けますが、冷水への溶け方は型や塩の形によって異なります。同じ素材名でも、水を加えた直後の状態を一律に扱えないということです。ゲルを作る条件と、材料を液体に溶かす条件は、別の段階として見ます。

また、力を加えて混ぜると流れやすくなり、静かに置くと粘性を取り戻してゲル状になる性質も記載されています。これはチキソトロピーと呼ばれます。温度だけでなく、混ぜたり静置したりする操作と状態の関係も、食品中での使われ方につながります。

アガーという呼び名

英語のagarは寒天を意味しますが、日本でアガー粉と呼ばれる材料は、一般的な寒天と原料や特性が異なるとされています。カラギーナンを含む海藻を原料とし、別の植物由来の成分を合わせるものもあります。

同じ解説では、アガー粉の食感はゼラチンのゼリーと寒天の間で、寒天よりやわらかく、口内の温度では溶けないとしています。呼び名の対応だけで置き換えず、素材の説明として区別しておくと、日本語と英語の資料を読み比べるときにも混乱が減ります。

海藻を固める地域の料理

農林水産省「うちの郷土料理」は、静岡県のところてんを、天草を水と酢で煮て、こした液を型で固め、突き器で細長く押し出す料理として紹介しています。酢しょうゆだけでなく、きな粉や黒蜜で甘く食べる方法も記載されています。

静岡県の資料では、西伊豆で主に採れるマクサはやわらかく粘りのあるところてんに、東伊豆で多く採れるオオブサは太く硬いところてんになると紹介されています。ところてんという料理名が共通でも、使う海藻の違いが地域ごとの食感に表れます。

同じ資料の新潟県のいごねりは、いご草を煮て練り、薄くのばして冷やし固める料理です。佐渡では薄い板状のものを巻いて細く切るのに対し、本土では容器で固めて板状に切る食べ方が紹介されています。形の違いにも、地域の作り方が表れています。

広島県のイギス豆腐は、海藻のイギスと生大豆粉を煮溶かして固める料理です。にんじん、ごぼう、えびを入れる場合もあり、酢味噌やしょうがじょうゆなどを添えると説明されています。豆腐という名前でも、海藻を煮溶かして固める性質を使っています。

魚や肉の煮汁を冷やす料理は、これらの海藻料理とは材料の系統が異なります。コラーゲンを多く含む食材と料理では、その違いを扱います。甘いゼリーの作り方は果汁のゼリー、ことばの確認は用語集のゲルへ続きます。

参考にした資料