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『ペプチド』とは:アミノ酸のつながりを読むことば
「ペプチド」は、特定の食品や材料だけを指す言葉ではありません。アミノ酸がペプチド結合で短い鎖状につながった分子の総称です。コラーゲンペプチドを読む前に、アミノ酸、結合、鎖の長さという言葉を分けると、材料と体内の過程を混同しにくくなります。
アミノ酸は、鎖をつくる単位です
アミノ酸は、広い意味ではアミノ基とカルボキシ基を持つ有機化合物です。たんぱく質の説明では、主にα-アミノ酸を指します。アミノ基やカルボキシ基は、ほかの分子と反応する部分の呼び名です。アミノ酸は、たんぱく質の鎖を構成する単位になります。
アミノ酸ごとの性質の違いは、側鎖と呼ばれる部分に現れます。水になじみやすいもの、なじみにくいもの、酸性や塩基性を示すものなどがあります。単に同じ形の粒が並んでいるわけではなく、構成するアミノ酸の性質が、できあがる鎖の性質にも関わります。
たんぱく質は、アミノ酸の数や種類、結合する順序によって異なります。材料の名前だけで鎖の正体がすべて決まるわけではありません。研究でペプチドを同定するというときには、含まれるアミノ酸だけでなく、どの順番でつながっているかも調べます。
ペプチド結合と「残基」という呼び方
ペプチド結合は、アミノ酸のアミノ基と、ほかのアミノ酸のカルボキシ基が、水を離して結びつく結合です。この反応を脱水縮合といいます。結合した後の鎖のなかにある、アミノ酸に由来する部分は「残基」と呼びます。残基という表現は、反応前のアミノ酸がそのまま独立して並んでいるわけではないことを示しています。
鎖の端には、アミノ基側のN末端と、カルボキシ基側のC末端があります。配列の記載には方向があるため、使っているアミノ酸が同じでも、並び方が違えば別の分子になります。ジペプチドでも、異なるアミノ酸の結合順序によって異性体が生じます。
ペプチドは通常、末端を持つ直鎖状の分子ですが、環状のペプチドもあります。日常の説明ではひもにたとえると分かりやすいものの、すべてが開いた直線のまま存在するという意味ではありません。言葉の定義と、個々の分子がとる立体的な形は別に見ていきます。
ジペプチド、トリペプチド、ポリペプチド
アミノ酸残基が2個ならジペプチド、3個ならトリペプチドと呼びます。ジペプチドをつくるアミノ酸は、同じ種類でも異なる種類でもかまいません。名称の「ジ」「トリ」は、原料の種類や働きではなく、残基の数を表しています。
日本語版Wikipediaの説明では、残基が10個以下のものをオリゴペプチド、多数つながったものをポリペプチドと呼んでいます。一方、英語版Wikipediaでは、オリゴペプチドをアミノ酸が20個未満の鎖として説明しています。呼び方の境界には資料による違いがあり、分子の配列や長さそのものと、分類上の呼称は区別して読む必要があります。
たんぱく質との境界には、およそ50残基という目安が示されるものの、明確な線引きではありません。たんぱく質の項目も、ペプチドとの区別に明確な基準はないと説明しています。短い鎖ならすべて同じ性質ということでも、ある長さを超えた途端に性質が一変するということでもありません。
加水分解は、結合を切る反応です
加水分解は、水が反応して、分解した生成物が得られる化学反応です。消化では、酵素が有機物の分解を進めます。たんぱく質の大きな鎖が分解される過程では、より短いペプチドができ、さらにアミノ酸へと分かれていきます。
熱で立体構造がほどける変性と、結合が切れる加水分解は、同じ現象を指す言葉ではありません。コラーゲンから調理用材料への変化は、コラーゲン・ゼラチン・コラーゲンペプチドのちがいで、それぞれの工程を追っています。言葉を使い分けることで、形が変わる話なのか、鎖が短くなる話なのかが分かります。
食べたたんぱく質は、消化管で分解されます
消化は、食物の大きな分子を、吸収できる小さな分子にしていく過程です。口でかみ砕く操作も含まれますが、たんぱく質の鎖を化学的に分解するには消化酵素が働きます。食べる前の組織の形と、吸収される分子の形は同じではありません。
胃では、胃液中の成分から生じるペプシンがたんぱく質を分解し、膵液にもトリプシンやペプチターゼなどの消化酵素があります。分解は、食物が通る場所ごとに進みます。大きなたんぱく質が、そのまま小腸の細胞に取り込まれる、という単純な図では説明できません。
2004年の総説は、消化でできたジペプチドやトリペプチドを、小腸の上皮細胞がPEPT1という輸送体で取り込む仕組みを扱っています。輸送体は、細胞の膜を越えて物質を運ぶたんぱく質です。2004年の同総説は、この輸送体が遊離アミノ酸や、アミノ酸が4個以上つながるペプチドを基質にしないと記載しています。
ここでは、小腸の表面の膜を通って上皮細胞へ入る段階を見ています。それに対して、腸の細胞を通過して、分解されないまま血液へ移るかどうかは、さらに別の問いです。「細胞に取り込まれた」と「同じ分子が血液に到達した」は、同じ観察ではありません。
大きなペプチドが、そのまま通過するかという問い
2014年の総説は、健康な成人の腸から、ペプチドやたんぱく質が分解されずに門脈系へ移るという科学的証拠を検討しています。2014年の同総説は、ジペプチドやトリペプチドの取り込みは知られている一方、より大きいペプチドが体内で意味のある濃度で通過することには、明確な証拠が乏しいと結論づけています。
2014年の総説の論点は、健康な成人の腸管で、どの大きさの分子がどの状態で通過するかです。材料の名前にペプチドと書かれていることだけで、すべてが同じように吸収されるとは読み取れません。実際に測った分子と試験条件を見る話は、食べるコラーゲンの研究の読み方で続けています。
コラーゲンペプチドという呼び名が示すこと
ゼラチンは、コラーゲンを含む動物の組織から抽出・精製された材料です。そこからさらに加水分解されたものには、コラーゲンペプチドやゼラチン加水分解物という名称が使われます。これらは、由来や分解の状態を示す呼び方であり、特定の配列の分子だけを指す名前ではありません。
加水分解では結合が切れ、異なる大きさのペプチドが生じます。同じカテゴリー名であっても、由来や製造工程の違いがあります。体内でコラーゲンがつくられる過程は、つくられ方・入れ替わり・食べたたんぱく質のゆくえで、食品の加工とは分けて説明しています。用語だけを確認したいときは、用語集のペプチドも使えます。
参考にした資料
- アミノ酸 - Wikipedia
- ペプチド - Wikipedia
- Dipeptide - Wikipedia
- Peptide - Wikipedia
- タンパク質 - Wikipedia
- 加水分解 - Wikipedia
- 消化 - Wikipedia
- Molecular and integrative physiology of intestinal peptide transport(2004年)
- Are intact peptides absorbed from the healthy gut in the adult human?(2014年)
- ゼラチン - Wikipedia
- Gelatin - Wikipedia