朝夕の気温が冷え込み本格的な冬が近づいてきました。長距離を走るには空気も乾燥し、呼吸がしやすく絶好の季節と言えるでしょう。質の高いトレーニングも行えますし、大会では自己ベストの更新が大いに期待できます。
さて、今回は継続してトレーニングを行うためにもトレーニング後のクーリングダウンの重要性を改めて考えましょう。
急激な運動の停止は禁物
激しい練習などの直後には呼吸が苦しいゆえに倒れ込む場面を多く見かけます。そのような状態になってしまう気持ちはよく理解できます。しかし、座り込みや地面に寝転んだままだと実は疲労回復が遅くなってしまうのはご存知でしょうか。また、立ちくらみや気分が悪くなるなど不具合を起こす原因にもなります。
運動中は、全身へ血液を循環させて酸素を送る生理機能が働きます。心臓は勿論のこと足の筋肉の働きがポンプ作用となって循環の役割を担っています。しかし、急な運動の停止は、筋肉のその働きが止まり心臓へ戻るべき血液が足などの末梢で滞り、めまいなど体調不良を起こしてしまう危険性があるのです。全国のマラソン大会での緊急搬送などの多くは、ランニング中よりも走り終えた後のケースが圧倒的に多い理由は、このような急激な運動の停止にあると考えられます。
激しい運動中において筋肉内では、エネルギー源である糖の利用が高まり、乳酸が産生されます。皆さんがよく耳にする乳酸が疲労物質と言われるのは、強度が高い運動を続けると乳酸が処理できずに蓄積してカリウムが漏れ出すなどの現象によって筋の収縮を妨げる性質を持っているからです。しかし、乳酸は別の働きを持っており、血液循環によって処理されて再びエネルギーとなる性質も持っているため、単に疲労物質と言えず、むしろ持久的な運動では大切なエネルギー源になるのです。
また、実際のトレーニング中の場面においても同様です。インターバルやレペテイション(レースペースまたはそれ以上のペースと十分な休息を繰り返す)のトレーニングなどでは、リカバリー(回復時)でもジョギングを行うのは、血流によって乳酸の除去を促す目的があるからです。次の主運動のパフォーマンスを発揮するためにも重要と言えます。
クーリングダウンは血液循環を促すような全身運動を選択し、強度の目安は、あまり高過ぎず、低過ぎないレベルです。ウォーキングよりも心地よい程度の軽いジョギングが良いでしょう。時間は10分~20分くらいをおすすめします。
運動直後に筋肉を動かして血流を促すことは、乳酸を速やかに処理して再利用できるようになり、体調不良を起こさないなどの複数の効果をもたらします。トレーニング後には仲間とコニュミケーションを図るためにも是非行ってください。