夏は睡眠にまつわる悩みが増える時期。実は、夜に何をすべきか以上に、昼間どのように過ごすかが“ぐっすり”の決め手になることをご存知でしたか?今すぐはじめたい快眠生活のポイントを専門家に伺いました。
寝つきが悪い…快眠のカギは「昼間の過ごし方」!
「どうしたら寝つきがよくなるの?」「何をしたらよく眠れるの?」-夏は睡眠にまつわる悩みが増える時期。実は、夜に何をすべきか以上に、昼間どのように過ごすかが“ぐっすり”の決め手になることをご存知でしたか? 翌日の活力を生むためだけでなく、将来にわたり健やかな心身を保ち病気を遠ざけるために、今すぐはじめたい快眠生活のポイントを専門家に伺いました。
1.睡眠は心と体のメンテナンス「日中、とても眠い」は要注意!
年々暑くなる日本の夏。さらに現代人は仕事や育児、介護などで時間に追われ、慢性的な睡眠不足に陥りがち。まるで借金のように積み重なり心身にダメージを及ぼすことから「睡眠負債」とも呼ばれています。
「寝る時間を削っても元気でいられたらいいのに」などと、いわゆるショートスリーパーに憧れる人もいるようですが、そもそも睡眠は「メンテナンスの時間」。脳内を整理して記憶を固定させたり、成長ホルモンの分泌等で傷ついた細胞を修復し疲労をとったり、免疫機能を高める重要な役割を担っており、十分な時間を必要とします。
世界的に影響力のある米国の国立睡眠財団では、成人の場合で7-9時間の睡眠を推奨しています。しかし厚生労働省の調査によると、日本の成人における平均睡眠時間は7時間未満の人が約7割にものぼり、経済協力開発機構(OECD)の最新の国際比較調査でも、日本の平均睡眠時間は調査国中、もっとも短いと発表されています。
「5時間睡眠の人は7時間睡眠の人と比べてカゼにかかる人が4.5倍」との米国の研究報告もあります。感染症に抵抗する体の免疫力を高めるためにも、しっかり眠ることはとても大事なのです。
<睡眠の質、低下して睡眠負債、たまっていませんか?>
- 日中、とても眠い
- 朝、すっきり起きられない
- 布団に入ってからなかなか寝付けない
- 夜中にたびたび目が覚める
ひとつでも思い当たる人は要注意。たとえ布団に入っている時間は長くても、眠りの質が悪くなっているといえます。中でも「昼間の眠気」はもっとも重要なサインとなります。
2.「日中を、どう過ごすか」が良い睡眠の決め手に
それでは、夜ぐっすり眠るためにどうしたらいいでしょうか。
私たちはつい、就寝時のことばかり考えがちですが、注目すべきはむしろ「日中の過ごし方」。実は、朝起きたときから、体の中ではその日の夜に眠るための準備がすでに始まっているのです。
良い眠りを導く過ごし方のポイントは次の通り。とりわけ「朝の光」「運動」そして「夜のスマホを控える」は、夜更かししがちな現代人にとって、睡眠のリズムを整えるためにとても重要です。
朝
光を浴びる
日光を浴びると、脳内で心の安定に働くセロトニンという物質が分泌されます。これは睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンの材料になることが知られています。それと同時に光を浴びてからおよそ16時間後、夜、眠りにつきやすくなるタイマーがセットされます。
ただし日の出が早い夏は、早すぎる時間に朝日で目が覚めてしまうと却ってリズムを崩すもとに。遮光カーテンやアイマスクの利用などで調節しましょう。
朝食をきちんととる
人間の体には睡眠と覚醒のリズムや自律神経、ホルモンを調整する体内時計が多数備わっています。脳にある中枢時計と、内臓や筋肉等にある末梢時計がありますが、いずれもぴったり24時間周期ではなくずれが生じます。それをリセットするのが、前者は日光、後者は朝食をきちんととること。胃腸に食べ物による刺激が加わることで、覚醒-休息のリズムが整いやすくなるのです。
朝散歩のススメ
良い眠りのためにおススメなのが朝の光を浴びるついでに外を歩く20~30分程度の散歩です。 程よい運動はストレス対策になり、お腹も空くので朝食をしっかり摂るのに好都合。 加えて、体を活動モードに切り替え、光を浴びることで生活のリズムが整えられ、快眠へとつながります。 さらに、日光を浴びることで骨の代謝に重要とされるビタミンDの生成を促します。ビタミンDは感染症予防などに働く免疫機能の向上にも影響するとして注目されています。
昼
15分以内の昼寝でリフレッシュ
ランチ後にちょっと眠くなる、というのはよくあること。12:00~15:00までの間に10~15分程度うとうとすると、脳がリフレッシュされて午後の活動に好影響をもたらすことがわかってきています。企業でも積極的にこうした「お昼寝」の時間を設けるところが出てきています。ただし1時間も寝てしまったり、夕食後に寝てしまうと、夜の睡眠の質に影響してしまいますので、ご注意ください。
夕方の運動が寝つきを良くする
人間の体温は夕方もっとも高くなるため、この時間帯にきちんと上げておくとことで夜にかけての下がり幅が大きくなり、寝つきを良くします。
16:00~19:00ごろが良い眠りに適した運動タイム。買い物時に少し遠回りしてみたり、エスカレーターではなく階段を使ったりなど、できるだけ歩くようにしましょう。家の中でできる筋トレやエクササイズも◎。
晩
1寝る1~1.5時間前に、ぬるめの入浴
入浴で少し体温を上げておくと、布団に入るころに下がり、寝つきやすくなります。熱いお風呂は興奮をつかさどる交感神経が活発になり、覚醒してしまうので逆効果。また、体の中の温度(深部体温)を上げるためにもシャワーだけでなく、湯ぶねにつかりまししょう。
スマホやPCは早めにオフ!
夜遅い時間に強い光が目から入ると、脳が興奮して寝付きにくくなります。良い眠りのためには、床につく1時間前にはシャットダウンを。
3.ストンと眠りに落ちる「4・7・8呼吸法」
布団に入ってからも、あれこれ考え事をしたり不安になったりして眠れないというときにおすすめなのがこの呼吸法です。
ポイントは呼吸に意識を集中させること。「今、呼吸をしている」これだけを考えるようにすることで頭の中をストレスフリーにし、すんなりと寝つきやすくします。
4.エアコン、布団……寝室の快眠対策
熱帯夜が続く日本の夏は、寝室の環境づくりにも気を配りたいもの。住居の立地や建材などの差異はあるものの、一般的には次のような条件を満たす環境が望ましいとされています。
- 温度:26度程度
- 湿度:50~60%程度
- 光:豆電球1個程度(光源が目に入らないようにフットライトなど)
- 音:40~50デシベル以下(気になる音がしない静かな環境)
できるだけ眠る前にエアコンで寝室を冷やしておき、就寝時に設定温度を少し上げておくと速やかに入眠しやすく、かつ夜中に体が冷えすぎるのを防ぎます。寝始めの1時間半ほどをしっかり寝ておくことで熟睡感が得られ、疲労の回復にも役立ちます。
シーツや上掛けは冷感素材のものなどで熱をこもらせない工夫を。枕は仰向けだけでなく、横向きになったときにもフィットして寝やすいものを選びましょう
就寝中、しばしば物音で目が覚めてしまう場合は耳栓を使ってみるのも一手です。 なお、夏でも冷えるからと靴下を履く人が特に女性には多く見られますが、手足の先からの放熱を妨げ体温が下がりにくくなるため、寝つきには逆効果。冷えが気になる人は足首と甲のみを覆うタイプ(サポーターやトレンカ)にするか、大き目のゆるい靴下にして、放熱を妨げないようにしましょう。
5.日中の“耐えがたい”眠気、朝のだるさは「睡眠時無呼吸」かも
年齢やホルモンバランス、また骨格や生活習慣の条件が重なり、夜間に何度も呼吸が止まってしまうことを睡眠時無呼吸症候群といいます。熟睡感が得られないだけでなく、心臓や脳、血管に負担をかけ、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる疾患のリスクを高めることがわかっています。
家族にいびきを指摘されたり、起床時にだるく、昼間、耐えがたい眠気に襲われたりする場合は、病気の可能性が疑われます。睡眠外来や循環器科、内科などで検査が受けられます。
お話を伺った方
ココロとカラダを整える快眠コンシェルジュ
日本睡眠学会 日本睡眠改善協議会 睡眠改善インストラクター
ヨシダ ヨウコさん
寝具店の娘として生まれる。会社員時代、激務による極端な睡眠不足から前髪が真っ白になる。さらに数年におよぶ母の介護生活からも「睡眠の重要性」を認識し、睡眠改善の仕事を始動。質の良い睡眠を広めるために発酵食、漢方、アロマ、リラクゼーションヘッドスパなども学ぶ。
最近では「入眠体操(スリープイン ストレッチ)」やマインドフルネスを取り入れた睡眠改善研修に力を入れている。この秋、タイプ別睡眠改善の本を上梓予定。
公式サイトhttps://nemurinochikara.com/