コレステロールには大きく分けて、HDL(善玉)コレステロールと、LDL(悪玉)コレステロールの2つがあります。それぞれの役割と動脈硬化との関係、食事で気を付けることをご紹介します。
実は大切!? 食事では変わらない!?「コレステロールの真実」とは?
「コレステロールが気になる方に」コマーシャルや健康食品のパッケージでよくこんな文言を見かけます。コレステロールは健康にとって悪、と決めつけられがちですが、実は大きな誤解も。おさえておきたいコレステロールの知識をまとめました。
1.そもそもコレステロールとは何?
知名度は高くても、その働きまではなかなか知られていないコレステロール。語源はギリシャ語の「chole(=胆汁)」+「stereos(=固体)」で、体内ではタンパク質と結びついて水溶性となり、血液中などに存在していますが、体外で分離させると黄色味がかった白色の固体になります。
名前にもあらわれているように、コレステロールは脂肪の消化吸収に欠かせない胆汁酸の原料になります。そのほか、一つひとつの細胞を形作り保護する細胞膜や、副腎皮質ホルモンや性ホルモンの原料にもなるなど、私たちの体になくてはならない成分なのです。
2.「善玉」は全身から肝臓へ、「悪玉」は肝臓から全身へ
それではなぜ、身体に必要不可欠なコレステロールが、あたかも悪者のように言われているのでしょうか。すでによく知られていることですが、コレステロールには大きく分けて、HDL(善玉)コレステロールと、LDL(悪玉)コレステロールの2つがあります。
HDL、LDLとも、実はコレステロールそのものの種類ではなく、タンパク質と結びついた状態を指し、例えるなら、コレステロールを運ぶ「トロッコ」のようなものです。HDLは、血管内のコレステロールを回収してまわり、肝臓に運ぶ役割を持っています。肝臓に運ばれたコレステロールは代謝され、体外へ排出されます。
これに対しLDLは、HDLとは逆に、肝臓からコレステロールを持ち出し、全身に運ぶ役割を持っています。しかし運ばれたコレステロールは先に話したように、身体の各所で細胞膜やホルモンなどの原料となりますので、これだけで悪玉、とはいえません。
つまり、HDLというトロッコに乗ったHDLコレステロールと、LDLというトロッコに乗ったLDLコレステロールの量のバランスがとれていれば、問題は起こらないのです。
3.「悪玉」が増えると動脈硬化が進んでしまう
ところが、このバランスが崩れ、LDLコレステロールが過剰になってしまうと、肝臓から全身へとどんどんコレステロールが運ばれ、HDLが回収しても追い付かなくなり、身体にたまっていってしまいます。この状態が良くないのです。
すっかりおなじみになった「メタボ(メタボリックシンドローム)」の状態になると、ただでさえ悪者のLDLコレステロールはさらに変性し、小さく密度の高い粒子になります。これはVLDL(超悪玉)コレステロールと呼ばれています。血管壁のすきまに容易に入り込んで蓄積されていくため、脳梗塞や心筋梗塞の引き金となる動脈硬化が進んでしまうのです。
4.食事で気をつけるべきは卵よりも菓子パン!?
卵や鶏レバーなどの、コレステロールを多く含む食品を摂ると、コレステロール値が上がる-昔はそう言われていましたが、昨今、食品から直接摂りこまれるコレステロールの量はそう多くはないことがわかってきています。厚生労働省は2015年4月改訂の「食事摂取基準」でコレステロールの基準を撤廃し、日本動脈硬化学会も同年5月に「食事で体内のコレステロール値は変わらない」との声明を発表しています。
それでは、食事では何に気をつけたら良いのでしょうか。
コレステロールは肝臓でも合成されますが、その際には各種脂肪酸が材料となります。その中でも、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸といった脂質を含む食品を摂りすぎると、悪玉コレステロールを増やし動脈硬化につながりやすいと言われています。これらを含むおもな食品には、肉の脂身、菓子パンやクッキー、スナック菓子に使われることの多いマーガリンやショートニングなどがあります。
5.コレステロール値よりも動脈硬化の状態の方が重要
かつては「総コレステロール値」が高いと脂質異常症の恐れがあり、動脈硬化になりやすいとされていました。しかし今は、総コレステロールが高くても必ずしも脂質異常症とは言えないことがわかっており、診断基準が見直されています。
脂質異常症の診断基準
血液検査で下記のいずれかに該当すると脂質異常症であるとされています。
- 悪玉コレステロール値が高い→ 140mg/dl以上
- 善玉コレステロール値が低い→ 40mg/dl未満
- 中性脂肪(トリグリセライド)値が高い→ 150mg/dl以上
ただし、脂質異常症が即、動脈硬化につながるとも言い切れません。特に女性の場合は悪玉コレステロール値が高いだけなら動脈硬化の心配は男性よりも少ないことがわかってきています。女性は閉経するまで女性ホルモンの働きにより、血管のしなやかさが保たれており、閉経後もある程度その“貯金”により、動脈硬化の進行が遅くなるためです。
ただし、悪玉コレステロール値が高いのに加え、肥満や高血圧、糖尿病、あるいは喫煙の習慣があると、動脈硬化のリスクはぐんと上がってしまうので気をつけましょう。
6.コラーゲンはコレステロールフリー
コラーゲンはもともとタンパク質の一種であり、脂質を含みません。コレステロールは脂質(脂肪酸)の一種ですから、コラーゲンにはコレステロールはほぼ含まれていません。コラーゲンペプチドは、コレステロール値や脂肪分、肥満が気になる方でも安心して続けられる食品です。