「褥瘡(床ずれ)」や再生医療をはじめとして、さまざまな医療現場でコラーゲンの可能性が期待されています。その実験事例をご紹介します。
コラーゲンの医療への期待
床ずれの改善
超高齢化社会、と呼ばれる現代の日本で問題になっているのが、「褥瘡(床ずれ)」です。これは寝たきりなどによって、「皮膚の細胞に酸素や栄養素を届けられなくなる」ために起こります。
臨床試験では、コラーゲンペプチドを1日10g、16週にわたり摂取することで、コラーゲンペプチドを食べていない群よりも傷の大きさと進行をスコア化した指標で大きく改善が見られ、傷の面積も小さくなることがわかりました。
これは、コラーゲンペプチドによって皮膚再生に関わる酵素が増加し、「ヒアルロン酸やコラーゲンを産生する」線維芽細胞を活性化することで、皮膚の再生を促進すると考えられています。
日本褥瘡学会の褥瘡予防・管理ガイドライン第4版(2015年改定)に、タンパク質(コラーゲンペプチドほか)の補給が重要で、かつ、コラーゲンペプチドが創傷を治癒する栄養素としても有効であると記載されたことから、最近では、病院や介護施設での使用が増えています。
歯周病にも期待
マウスの実験で、コラーゲンペプチドを3週間与えたところ、歯の土台となる歯槽骨を含む顎の骨を保護する作用が認められました。これは、骨の代謝と同じメカニズムが顎の骨にも当てはまることを意味しています。
これにより、歯茎が強くなるだけでなく、土台を整えることでインプラントなどの処置ができるようになる、と考えられています。
血管の若返り効果
コラーゲンは血管をつくる主な成分の1つ。コラーゲンペプチドを摂取することで細胞がコラーゲンを作り出す力が高まり、しなやかな血管を取り戻すことがわかりました。
抗加齢ドックにおける試験で、1日2.5gのコラーゲンペプチド摂取3ヶ月後に脈波伝搬速度(血管の硬さを計るもの)が改善し、血管年齢が5歳若返りました。このことから、動脈硬化改善作用があることが示されました。
高血圧の改善
硬くなった血管を血液が通ろうとして圧が高まるのが高血圧の基本的なメカニズム。上記の血管若返り効果は、それを根本から解決できる可能性があります。
また、ゴマペプチド、大豆ペプチドといった各種ペプチドに、血圧上昇に関わる酵素の働きを阻害するという作用があることがわかっており、コラーゲンペプチドにも同様の作用が確認されています。
高血糖値の改善
糖尿病の患者さんに対して、標準処置に加え、コラーゲンペプチド1日10g、12週間摂取する臨床試験を実施したところ、経時的な空腹血糖値、HbA1C(糖化の指標)、インスリン抵抗性が改善されました。これらの結果は、糖尿病患者の血糖値管理において、薬剤との併用によるコラーゲンペプチドの有用性を示唆しています。※
血糖値の上昇抑制は、次のメカニズムによるものです。
- 腸での糖の吸収を抑制する作用
- インスリンの分泌を促進するホルモンGLP-1を分解する酵素DPP-4の阻害作用
- GLP-1の分泌自体を促進する作用
※薬剤との併用は、医師、または、薬剤師への確認が必要です。
「再生医療」で人類の夢をつなぐ
再生医療とは病気や怪我などで失われた組織・臓器の再生や、機能の回復を目的とする医療です。もともとカラダに存在するコラーゲンは、拒絶反応の心配がほとんどないため、再生医療に適した素材(バイオマテリアル)として注目されています。
人工皮膚や人工骨だけでなく、血管や角膜などさまざまな組織の再生医療に対し、コラーゲン、ゼラチン、コラーゲンペプチドの利用が広く期待され、技術開発が進められています。このほかにも、人工細胞外マトリックスや、医療品のドラッグ・デリバリー・システムへの応用が実用化に向けて研究されているほか、iPS細胞が生育する足場としての活用が進んでいます。今や現代医療の発展にとって欠かせない存在なのです。
※『コラーゲン完全バイブル』(真野博著、幻冬舎メディアコンサルティング)より