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コラーゲン研究室

活性型コラーゲンペプチドの探究

「カラダをめぐるコラーゲンの旅 Part3」〜ACOPの役割から見えてきたコラーゲンペプチド摂取における体感の違いについて〜

今回はコラーゲンペプチド摂取における体感の個人差について、その違いの要因が何か?その可能性をご紹介したいと思います。まず、プロリン-水酸化プロリン(Pro-Hyp)の作用機構(作用点)について近年の報告をご紹介します。からだの中で産生された高品質コラーゲンは、様々な臓器や器官において、接着剤のように細胞と細胞を結びつける足場として機能します。細胞が円滑に機能するために必要不可欠な物質として働いています。古くなったコラーゲンはやがて分解されペプチドやアミノ酸まで小さくなります。そしてまた新しいコラーゲンが合成されます。このようにからだの中では絶えず合成と分解を繰り返しています。これがコラーゲン代謝です。一般的に若い時にはコラーゲン代謝は活発ですが、歳を重ねていくとコラーゲン代謝が遅くなります。コラーゲン代謝が遅くなると、分解されて生じるPro-Hypの産生量も減少します。ごく最近の研究成果から、Pro-Hypとその前駆体である活性型コラーゲンオリゴペプチド(ACOP:エーコップ)の量の変動が明らかになってきました。そしてこの点こそが今回の本題、「コラーゲンペプチド摂取による体感の違いの要因」の一つになると予想しています。

プロリン-水酸化プロリン(Pro-Hyp)は細胞を刺激する!

分解されたコラーゲンの最終産物の中の生理活性をもつペプチドの一つがPro-Hypジペプチドです。前号にて詳細な生理作用を述べましたが、近年の研究からPro-Hypが各々の組織においてどのように働きかけているか、徐々に明らかになってきました。Pro-Hypは、血中を介して全身を移動し、標的組織の細胞に到達したのち、細胞へ直接作用しているようです。からだの細胞には、特有の機能を獲得した分化した成熟細胞と、未成熟の未分化細胞(幹細胞)が存在しますが、一部のPro-Hypは幹細胞に到達し、その後、分化(細胞の形質をかえること)を促すように刺激を与えます。これにより不足している細胞を増やしたり、衰弱している細胞の活性が高まるように、それらの細胞へと変化し機能を補うよう働きかけています。例えば、骨をつくり出す骨芽細胞の前駆細胞である間葉系幹細胞から骨芽細胞へ分化誘導させる際、Pro-Hypを添加した場合と、していない場合では、添加した方が骨芽細胞の細胞数が顕著に増えます1)。関節などの軟骨細胞も同様で、Pro-Hyp添加により軟骨細胞数が増えます2)。幹細胞内への作用機序も一部明らかとなっています。皮膚の表面である表皮を構成する線維芽細胞でも同様に細胞数が増えるようです3)。ではPro-Hypの作用機序にはどのような分子機構があるのでしょうか?

細胞の運命を決定する、細胞分化誘導の仕組みとは?

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血液を介して標的器官へ運ばれる、あるいはその組織で代謝されて産生されたPro-Hypは、細胞内に取り込まれ、これ自身が細胞内で特殊なタンパク質と結合し、細胞の核へと情報を送っていきます。細胞内の核には、規則的にDNAが折り畳まれて束となって存在する染色体が存在します。一部のPro-Hypの情報はDNA上へ到達し、機能的な遺伝子に作用しているようです。ここでの遺伝子の作用とはDNA配列をもとにRNAを作りだし、やがてタンパク質を産生することをさします。具体例として、先に述べた間葉系幹細胞の培養細胞にPro-Hypを添加した場合、骨芽細胞の分化に重要なタンパク質や骨芽細胞に特徴的な構成タンパク質(オステオカルシン)など複数のタンパク質が増加することが判明しています4-5)。軟骨細胞や上皮細胞においても同様な知見が得られています。さらに最近ではPro-Hypが結合する細胞核内の結合因子が見いだされてきています6)。これらのことからもPro-Hypが細胞機能を調節する物質であり、生命維持に必要不可欠な分子であることは疑う余地がないといえます。近い将来には更に詳細な作用機構が明確になるものと期待されますが、Pro-Hypが作用する際にその分のPro-Hypが体内で消費されていると考えられます。

Pro-Hypがどのように保たれているかを究明する!

体内で合成されたコラーゲンから分解して得られるPro-Hypは、一定の濃度で血液中に存在しています。また、食事やサプリメントで摂取され、コラーゲンペプチド中のPro-Hypは小腸から吸収され血液中へと移行し、一時的に高濃度になります7)。さらに、血液中のPro-Hyp濃度と尿中のPro-Hyp濃度には相関が認められ、血中濃度が高まると、尿中の濃度も高まります(未公表データ)。逆に血中濃度が低下すると、それを補うためコラーゲン分解により新たに産生されるようです。このように血液中と尿中のPro-Hyp濃度は正の相関があります。したがって、尿中のPro-Hypを測定することは、コラーゲン代謝を理解する上で意義があるといえます。
私たちが激しい運動を行うと血液中の酸素濃度の低下に伴い腎機能が低下します。そして腎臓の糸球体ではタンパク質濾過機能が低下していきます。結果として尿中にタンパク質が排泄されます。健康診断前日に激しい運動を控えなければならないのはこのためです。これらの知見をもとにトップアスリートでは激しい運動を行った際の尿から排泄されるPro-Hyp量が亢進するのではないかと仮説が立てられました。そこで、城西大学の真野先生らは男子大学生の陸上競技選手に協力してもらい、激しい運動(約12キロのランニング)前後の尿中のPro-Hypを測定してみることにしました(論文投稿準備中)。その結果は予想に反し、Pro-Hyp量は運動前後において大きな変動は認められませんでした。彼らにとって、この程度の運動では影響しないと考えられます。それと同時にこの結果から重要なポイントが見えてきました。

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Pro-Hypの前駆体であるACOPの量は、運動後に減少することが判明しました。すなわち、ACOPはPro-Hypの前駆体として蓄えられており、必要に応じてPro-Hypを速やかに産生する機構が推測されました。生理活性をもつPro-Hypを安定に供給するメカニズムです。コラーゲンを分解しPro-Hypを産生する工程は数ステップからなりますし、直ぐにPro-Hypを供給するよりもオリゴペプチドで蓄えておき、需要に伴って供給していくことはとてもリーズナブルです。Pro-Hyp の生理作用を調節するため、ACOPという前駆体構造で留めることでバランスを保っているという発想です。このように考えるとACOPの需要と供給のバランスの強弱がコラーゲンペプチド摂取における体感の個人差に繋がるのではないか?と考えられます。すなわち、ACOPが不足しPro-Hypを十分に産生できない場合、細胞機能に支障が生じ、これが不快感であったり、痛みとして感じてくるという可能性です。そのような状況において、Pro-Hypをサプリメント摂取により補えた際にコラーゲンペプチド摂取の体感が現れると推測しています。

次回の予告 効率よくACOPを維持することの重要性

以上、我々は体内のACOP量を把握するため尿中ACOPを測定することは、コラーゲン代謝を知る上で非常に重要であると考えています。そしてACOP量の基準値や運動や身体活動を行った際の消費量を把握することで、コラーゲン代謝のバランスを理解することができると予想しています。コラーゲン代謝バランスがよく、すぐにACOP量を増やせる方に対して、代謝が遅く、ACOPが不足がちになる方もいるでしょう。これらの方々のコラーゲン代謝バランスの変動と、コラーゲンペプチド摂取の際の体感について統計解析を行うことで、個々の体感の違いが明確になると予想しています。次回はこの点を詳細にお伝えしたいと思います。

【参考文献】

1)Elango et al., Cells 2019, 8, 446

2)Nakatani et al., Osteoarthr Cartil 2009, 17, 1620

3)Shigemura et al., J Agric Food Chem 2009, 57, 444

4)Kimira et al., Biochem Biophys Res Commun, 2014 453, 498

5)Kimira et al., Cell Mol Biol Lett. 2017, 22:27

6)Nomura et al., Biosci Biotechnol Biochem. 2019, 83, 2027

7)Ichikawa et al., Int J Food Sci Nutr 2010, 61, 52

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