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健康のために

渡邉真由美のヘルスケアレポート

2020年 10月 更新誤嚥性肺炎を防ぐために「のみこむ力」を鍛えよう!

「口から食べること」はその人らしく生きる喜びと直結する、といっても過言ではありません。しかし高齢になると口や舌、のど等の機能が衰え、「うまくのみこめない」といった不便とともに、食べた物や菌などが気道に入ることで起こる誤嚥性肺炎のリスクも抱えやすくなります。のみこむ力を鍛える生活上のポイントやケア法を、専門家に伺いました。

のどの奥の「ふた」が閉じず 菌などの異物が肺に入り込む

口は体の外と内をつなぐ「関門」であり、食べ物など必要なものを取り込む一方、異物を排除する機能も持ち合わせています。しかし高齢になりその機能が衰えると、命を脅かす疾患を起こす恐れも。その代表が、肺に異物が入り込み炎症を起こす「誤嚥性肺炎」です。
厚労省「平成29年 人口動態統計」によると、誤嚥性肺炎は日本人の死亡原因の第7位であり、年間3万5千人以上が亡くなっているとされています。また、肺炎の入院患者(70歳以上)の7割以上が誤嚥性肺炎とのデータもあります。
誤嚥性肺炎の発症リスクに大きく関係するのが「のみこむ力」(嚥下力)。中咽頭と呼ばれるのどの奥にあり、気道に「ふた」をする役割を持つ喉頭蓋の動きが悪くなったり、ふたをするタイミングがずれたりするため、過って異物が気道に入り炎症を起こすもとになるのです(下図)。
国内の研究で、脳血管障害(脳卒中など)によるリハビリ目的での入院患者のうち、嚥下に問題がある人の10%は誤嚥性肺炎を起こしており、問題のない人の発症率3.6%を大きく上回っているとの報告もあります。

<喉頭蓋と「のみこむ力」>

喉頭蓋と「のみこむ力」
喉頭蓋は食べ物を気管に入れない「ふた」のようなもの。舌の根元にある舌骨についている舌骨上筋群、舌骨下筋群といった筋肉の動きにより、気道の入り口に「ふた」がされる。これらが衰えるとふたがうまくされず、上図のように食べ物が気管に入りやすくなる。

<誤嚥性肺炎の原因>

  • 口腔内の菌

    プラーク(歯垢)に含まれている菌など。
    高齢などで口から食べられない人も、これが唾液とともに気道に入りうるので注意が必要

  • 飲食物
  • 吐しゃ物

    頻度はまれだが、誤って肺に入った場合、胃酸が含まれるのでより強い炎症を引き起こす。

「のみこむ」は「食べる」一連の動作の1パート

一般的には、食べたものをうまくのみこめない状態は「嚥下障害」として知られていますが、医学医療の分野では、食べ物を口に運ぶ前の段階から一連の動作が始まっているとの考えから「摂食嚥下障害(または摂食・嚥下障害)」との名称が使われています。

摂食・嚥下のプロセス

誤嚥性肺炎を防ぐ3本柱は「口腔ケア」「トレーニング」「栄養」

異物を肺に入れないようにするには、のみこむ力や気道に入った異物を吐き出す力といった、口やのどの機能を良くするほか、炎症のもとになる菌を口の中で増やさないことも大切です。特に次の3点を心掛けましょう。

  1. 口腔ケア

    口の中を清潔にすることは、誤嚥性肺炎を防ぐ基本です。そのためにも歯磨きや、口から食べられない人の口腔清掃を怠らないようにしましょう。
     特に、夜寝る前の歯磨き・口腔清掃は重要です。口の中には膨大な数の菌が棲んでおり、就寝中に繁殖しやすくなります。それが唾液とともに誤って肺に入ると誤嚥性肺炎の原因に。菌の繁殖は止められませんが、夜の歯磨き・口腔清掃でできるだけ菌を減らしておくことは、リスク低減につながります。

  2. 食べる&のみこむ力をつけるトレーニング

    食べたものを口の中で適度な食塊にし、のどから食道へと送り込むには、口や舌、のどを動かす筋力が必要です。うまくのみこめない、のみこむのに時間がかかる、よくむせる、など気になる場合は、後述の体操を習慣にしてみましょう。

  3. 栄養管理

    高齢になると、フレイルと呼ばれる虚弱状態になりやすく、それにともないのみこむ力の衰えも進んでしまいます。栄養面でフレイル予防に有用なのは、筋肉など体をつくるのに欠かせないタンパク質をしっかり摂ること。肉、魚、大豆、卵を積極的に食べましょう。高齢で食事量が減り、おかずを残しがちな場合は、主食を少し減らし、その分、おかずが食べられるようにすると良いでしょう。

のみこみを安全に。「とろみ」の効用

食事の介助が必要な高齢者など、のみこむ力が衰えた人の食事では、安全のためにも「とろみ」剤の利用がすすめられます。とろみの状態は、のみこみの力に応じ、ドレッシング(とろみ弱)~とんかつソース(とろみ中)~ケチャップ(とろみ強)程度を目安に。とろみ剤が多すぎると、ぼてぼてになるなどで、のどを通りにくくなるため注意しましょう。

<とろみがつくことのメリット>

・のどに落ちるスピードが遅くなることで、誤って気管に入るリスクが低くなる(水などの液体は流れが速いので誤嚥しやすい)
・細かい食物がばらけずまとまる(みじん切りやそぼろなどの細かい食べ物は誤嚥しやすい)
・口やのどの粘膜に食片が付着しにくい(細かい食片が残ると誤嚥の原因に)
・とろみで食物がまとまることで、食塊が形を変えやすくなる(のどや食道を通過しやすくなる)

道具いらず!すぐできる!のみこむ力をつけるケア3選

のみこむ力をつけるには、1.食べたものをのどへ送る「舌」の力 2.食道へと送る「のど」の力 3.1と2の流れをよくする「唾液」の分泌 がポイントです。そのためには舌やのどを動かす体操や、唾液の出をよくするマッサージが有効。思い立ったときにすぐできるケア法を紹介します。

  1. 舌体操

    (1)舌を前へぐーっとできるだけ出す
    (2)舌を、歯肉の前側をなぞるようにして回す。右回し、左回しともに行う。
    (3)舌で、左右の頬の裏側をぐーっとできるだけ押す。

     (1)~(3)を続けて行いましょう。
  2. ごっくん体操&せきばらい

    (1)<ごっくん>人差し指となか指をそろえてのど仏のあたりに軽く添え、唾液を飲み込みます。このとき、のど仏が上下に動くのを意識しましょう

    (2)<せきばらい>せきばらい(からせき)には、食べた物が気管に入ってしまったときに速やかに出す作用があります。食べ物が入っていないときに行うと、吐き出す力のトレーニングになります。
    (1)、(2)とも思いついたときに数回、繰り返してみましょう。((1)と(2)を続けるのではなく、それぞれ数回行う)

  3. 唾液腺マッサージ

    唾液を分泌する唾液腺には「耳下腺」「顎下腺」「舌下腺」があり、マッサージすることで分泌が促されます。ぎゅうぎゅう力をこめたりせず、優しくさすったり押したりします。

    耳下腺
    人差し指から小指まで の4本の指を頬にあて、上の奥歯のあたりを後ろから前へ向かって回す
    顎下腺
    親指をあごの骨の内側の やわらかい部分にあて、耳の下からあごの下まで5か所ぐらいを順番に押す
    舌下腺
    両手の親指をそろえ、あごの真下から手をつきあげるようにゆっくりグーっと押す

「パ ン ダ の た か ら も の」で食べる&のみこむ力がアップ!

唇やあごなどの、口全体の動きをよくすることも、食べたものをよく噛み、のみこみやすい状態にするためにはとても重要です。

医療機関でも行われているトレーニング法の一つが「パンダのたからもの」。下記も参考にして、一音一音、しっかり口を動かして発してみましょう。滑舌の改善にも役立ちます。

やり方目的
「パ」上下の唇を閉じた状態からパッと勢いよく開く口に入れたものをこぼさず取り込む力をつける
「ダ」「タ」舌先を上あごの裏にあてた状態から「ダッ」「タッ」と離す食べたものをのどへ送る力をつける。食べたものをのみこみやすい塊にする力をつける
「か」のどの奥を閉じるようにしてカッと発音誤嚥を防ぐ
「ら」舌を丸め、舌先を上あごのやや奥にあてた状態から発音食べたものをのどへ送る力をつける。食べたものをのみこみやすい塊にする力をつける

※早口言葉ではありません。ゆっくりしっかり口や舌を動かすことを意識してください。

柴野荘一(しばの そういち)先生

お話を伺った方
東京医療保健大学 医療保健学部 医療情報学科 講師
柴野荘一(しばの そういち)先生

歯学博士、医療政策学修士、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士、介護口腔ケア推進士。東京医科歯科大学大学院にて高齢者歯科学および医療管理政策学(MMA)を学び、総合病院や歯科診療所で歯科治療とともに摂食嚥下障害の評価とリハビリテーションに携わったのち現職。昭和女子大学人間社会学部福祉社会学科言語聴覚士コース講師兼務。摂食嚥下に関する研究に加え、チーム医療の推進に向け、歯科衛生士等各種医療スタッフの業務分担や規定についての研究も行っている。

渡邉真由美 わたなべ まゆみ

プロフィール

健康予防管理専門士。
健康・美容・医学ライター、日本メディカルライター協会会員。

「ミドル~シニア世代のQOL向上」をメインテーマに、書籍、雑誌、WEB等の企画構成、取材、執筆を数多く行っている。

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